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心を抉る残酷さに 14

Penulis: 花室 芽苳
last update Terakhir Diperbarui: 2025-10-22 23:48:05

 そんな二人をいつまで見ていても仕方ないと思ったのか、とうとう朝陽《あさひ》さんが口を開く。それも仕方ないと思う、このままではどれだけ待っても埒があきそうになかったから。

「今さら仲間割れをしようと俺は一向に構わないが、今回の事はどう責任を取るつもりなんだ?」

 容赦のない言葉に、一瞬だけ東雲《しののめ》社長は怯んだ様子を見せたがそう簡単には黙る気はないらしく。この期に及んで、まだこの偽装した写真で私を脅しすつもりのようだ。

「責任だって、こっちにはこの写真があるんだぞ? 私達が周りに話してしまえば、こんな女性社員一人くらいどうとでも……ひっ!」

「ほお? 別に俺や神楽《かぐら》ループを敵に回しても良いというのなら、それも良いんじゃないか」

 小さな悲鳴を上げた東雲社長だが、それもそのはず。一瞬でその雰囲気を変えた朝陽さんは、私が見ても怖ろしい程だったから。普段でもドSだと思う事はあるが、それとは比べ物にならない程の威圧感。

 私はまだ、朝陽さんを本当の意味では分かってなかったんだ。

「こんな女一人に、どうしてそこまで……?」

 確かに神楽グループの御曹司である朝陽さんが、私のようなどこにでもいるOLを特別扱いしていれば驚くだろう。ただそれは··知らなければ、の話だけれど。

「ああ、東雲社長は知らないのか。この女性、雨宮《あまみや》 鈴凪《すずな》は俺の婚約者だという事を」

「な、なんだって!? そんな話は、私は少しも聞いてな――っ」

 やっぱり東雲社長は知らなかったんだ、私と朝陽さんの関係について。そうなのだろうとは思ったが、黙っていて正解だったのかもしれない。

 こうして朝陽さんが話したほうがずっと効果的でしょうから。その考えは、やはり当たっていたようで……

「ああ、そうだろうな。そういう都合の悪い事は教えない奴だ、あんたの今回の取引相手は」

 まるで今回の裏幕を知っているような朝陽さんの口調に、大体の想像はついてしまった。その人の性格も使いそうな手も、彼はよく知っている人物だという事だから。

 ……そんなの、私には一人しか心当たりがいない。

「そんな、じゃあ私はいったいどうすれば? この写真だって……」

 そのままガクッと膝をつき、震えるような声で朝陽さんに懇願しだした東雲社長が少し気の毒にも感じたがどうすることも出来ない。

 ここで口を出して、また
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